突発的に一次創作「夕暮れどき」
「あ、アキアカネ」
そう真理が指差した先には確かに何匹もアキアカネが飛んでいた。
この季節、未だに発展を見せていないこの下町風味の街は、土手もあるしそのすぐ傍には小さくはあるが、川も流れている。
俺も真理もこの街が好きで、特に帰り道では一緒になる土手通りを通るのが大好きだ。見晴らしもいいし、夕暮れ時になるとものすごく景色が良くなる。
真理はというと、楽しそうにアキアカネを追いかけていた。普段ならあきれて、ため息を吐いてしまうほどなんだけど、なにかこう―――この景色と雰囲気が自然と俺の頬を緩めてしまっている。
俺はこういう真理の表情が大好きだ。
永遠なんてものは絶対に無いと思う。
真理は永遠に二人は一緒に居ようねっ、て言っていたけど、俺は永遠にこの関係が続くとも思えない。運がよければこのままずっと続くかもしれない。
……だけど、真理のこの楽しそうな笑みを見てると、そういうものも信じてみたくなってしまう。
「ねぇ、悠」
「ん?」
「私達もさ、このアキアカネみたいにずっと一緒だよね?」
満面の笑みを浮かべて、俺の手を握る真理。
「ああ、そうだな」
自然に俺もつられて笑う。
こんな当たり前のような会話だけど、それがこの茜色の空を幸せの色に変えてしまうのだ。
気づけば、俺も真理も歩く速度を緩めていた。